高血圧の食事療法

高血圧の食事療法

「何年も前から健康診断で血圧を指摘されている」「血圧がなかなか下がらない」という方は多いのではないでしょうか?
中には症状がないから気にしていないという方も…
高血圧は自覚症状に乏しいため、気づかない・症状がないから治療していないなど放っておかれがちな疾患です。

2010年の国民健康・栄養調査によると、30歳以上の日本人男性の60%、女性の45%が高血圧と判定されています。
日本人の高血圧患者数は約4300万人(男性2300万人・女性2000万人)と予想されており、これは3人に1人が高血圧ということになります。
ここでは高血圧に大切な食事療法についてまとめています。

そもそも血圧ってなに?

まず高血圧について触れるまえに血圧とは一体何の数値なのか?
血圧の2つの数字が表す意味について説明します。

私たちの心臓はポンプのように血液に圧をかけて血管へ送り出し、動脈を通って全身の細胞に酸素や栄養分を運んでいます。そして静脈を通って老廃物などを回収し、再び心臓に戻ってきます。
血圧とは血液の圧力によって血管の壁が押される力のことをいいます。
心臓から送り出される血液の量と血管の硬さによって数値が決まります。
 
血圧を測定すると2つの数字が表示されます。
よく「上」や「下」といったように表現されますが、この「上」が収縮期血圧(最大血圧)、「下」が拡張期血圧(最小血圧)を表しています。
簡単に言うと「上」は心臓が収縮して血液を送り出したときに血管にかかる圧力、「下」は心臓が拡張して血液を貯め込むときに血管にかかる圧力のことです。

心臓の動き画像元:血圧ドットコム

高血圧とは?

高血圧とは血圧が高い状態をいい、大きく分けて本態性高血圧と二次性高血圧の2種類があります。

本態性高血圧

原因不明ですが、元々高血圧になりやすい体質、塩分の摂りすぎ、肥満、ストレス、喫煙、過度の飲酒、運動不足など生活習慣によるものと考えられています。
全体の85~90%

二次性高血圧

ホルモン分泌異常や腎臓疾患、薬剤の副作用などが原因
全体の10~15%

分類 収縮期血圧      拡張期血圧
至適血圧 <120     かつ    <80
正常血圧 120-129   かつ/または  80-84
正常高値血圧 <120     かつ    <80
正常血圧 130-139   かつ/または  85-89
Ⅰ度高血圧 140-159   かつ/または  85-89
Ⅱ度高血圧 160-179   かつ/または  90-99
Ⅲ度高血圧 ≧180    かつ/または   ≧110
(孤立性)収縮期高血圧 ≧140      かつ     >90

高血圧が続くとなぜ危ないの?

高血圧は常に血管に過度の圧力がかかっている状態です。
そのため、血管に負担をかけ続けると耐え切れなくなり、脳の血管が破裂して脳出血を起こす可能性があります。
特に血管は年齢とともにもろくなってくるので年齢が上がるにつれ、脳出血のリスクは高まります。

また、心臓はどんどん血液を送り出そうとして次第に大きくなります。これが心肥大という状態です。
心肥大が進むと、心臓の動きが鈍くなり血液を全身に送り出す機能が低下し、さまざまな心臓病を引き起こします。
その他にも高血圧は脳卒中や心臓病だけでなく、腎臓病も引き起こします。

高血圧により引き起こす疾患画像元:ふたば鍼灸院

高血圧の時の症状にはどんなものがある?

高血圧は重症化するまでほとんど症状がないことが多いので、健康診断などで指摘されない限り気づかずに放置されてしまう場合が多くあります。症状がなくても血管には負担がかかっているので血圧コントロールが必要です。 

高血圧で、頭痛、動悸、息切れ、肩こり、めまい、胸の痛み、むくみなどの症状が現れた場合は重大な合併症が起こっている可能性があるのですぐに受診しましょう。

                              

高血圧の治療の流れ

高血圧の治療は程度によって変わってきますが、大きく分けて

  1. 薬物療法
  2. 生活習慣の修正(食生活)
  3. があります。

高血圧の治療の流れ画像元:血圧ドットコム

高血圧の食事療法

高血圧の食事療法はエネルギーや食塩の過剰摂取に注意し、栄養バランスのとれた食事をすることが大切です。

  1. 適正体重を維持
  2. 肥満は血圧の上昇に影響します。お菓子や嗜好飲料などの糖分、揚げ物や調理油などの油脂の摂り過ぎによるエネルギーの過剰摂取に注意して適正体重を維持しましょう。
    早食いはエネルギーの摂り過ぎに繋がるのでよく噛んでゆっくり食べるように心がけましょう。
    標準体重の計算方法
    身長(m)×身長(m)×22
    (例)身長が160㎝の場合は「1.6(m)×1.6(m)×22≒56.3(㎏)」

  3. 栄養のバランスを考えて3食規則正しく食べる
  4. 適正なカロリー範囲内でおさめるだけでなく、毎食「主食・主菜・副菜」をそろえることが大切です。

    主食:エネルギーのもと(例)ご飯、パンなど
    主菜:血管を丈夫にする(例)魚、大豆製品、肉、卵など
    副菜:ビタミンやミネラルを含む(例)野菜類、海藻、きのこなど
  5. 動物性脂肪を控える
  6. 動物性脂肪(バター・肉の脂身など)は血液中のコレステロールを増やし、植物性脂肪や魚油(イワシ、さんま)などには減らす働きがあります。
    動脈硬化を予防するために、肉だけに偏らず魚や豆腐も取り入れましょう。

  7. アルコールは医師の指示の下
  8. 飲酒習慣は血圧上昇の要因となります。
    エタノールで男性20~30ml(おおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合弱、ウイスキー・ブランデーダブル1杯、ワイン2杯弱に相当)/日以下、女性はその約半分の10~20ml/日以下とされていますが、医師の指示に従いましょう。

  9. 食塩を減らす
  10. 塩分の摂り過ぎは血圧を上昇させる大きな要因です。薄味が苦手な人は献立や調理法、食品選びなどを工夫し、減塩を心がけましょう。
    加工食品に含まれている食塩も合わせて塩は1日6g未満としましょう。

塩1gに相当する調味料の量

濃口醤油の画像 減塩醤油の画像 中濃ソースの画像
濃口醤油
小さじ1杯強(7g)
減塩醤油
小さじ2杯(12cc)
中濃ソース
大さじ1杯弱(17g)
マヨネーズの画像 ケチャップの画像 味噌の画像
マヨネーズ
大さじ4杯半(56g)
ケチャップ
大さじ2杯(30cc)
甘味噌
大さじ1杯弱(16g)

どんな食材を選んだらいい?

(1)食品の選び方
加工品や塩が多く含まれている食品は避け、生の食品を選びましょう。
           
(2)調理の工夫
煮物や汁物には天然の出汁をきかせることで薄味でもおいしく食べることができます。
また香りや風味を生かしましょう。

(3)食事を摂るときの注意点

  • 主食はできるだけ白ご飯
  • パンや麺類は食塩が含まれているので注意!
  • 汁物(みそ汁やスープ)はできるだけ控える。
  • 麺類の汁は残す!(全部飲むと5g以上の食塩量)
  • 漬物や佃煮類は少量でも塩分量が多いので注意
  • 食卓で使う調味料はなるべく控えめに
  • 外食やお惣菜は食塩量が多くなりがちなので控える
食塩が「ナトリウム」で示されている場合もあるのでその場合は以下の計算式で算出しましょう。
   ナトリウム(g)×2.54=食塩量(g)

何を積極的に食べたらいいの?

高血圧の予防や改善に良い栄養素や食べ物についてまとめています。
ここに書いてある食べ物をたくさん食べればよいというわけではなく、適正なカロリー内でバランスよく献立を考える必要があります。

成分 効果 食べ物
ビタミンC 悪玉コレステロールの酸化を抑制する働き過酸化脂質の生成を抑える→高血圧予防 ほうれん草・牛乳・ブロッコリー
ビタミンE 悪玉コレステロールの酸化を抑制する働き過酸化脂質の生成を抑える→高血圧予防 ピーマン・芋類・レモン
ビタミンB2 動脈硬化の改善 しいたけ・鮭・納豆
ミネラル カウリンが効果発揮
※カウリン:ナトリウムと一緒に働いて細胞内外の水分を調整する
海藻類・豆類・緑黄色野菜
マグネシウム 血管を弛緩させる 干しひじき・ほうれん草・アーモンド
タウリン 細胞内の浸透圧調整に効果を発揮 タコ・ハマグリ・カキ
カゼイン 血行を促進し血圧を低下させる 牛乳・ヨーグルト
カリウム 体内で不要になった水分や塩分を腎臓から排出させる
※腎機能低下の人は摂り過ぎ注意!
リンゴ・バナナ・ほうれん草・アボカド・パセリ
食物繊維 コレステロールの吸収を下げる効果 きのこ・海草・こんにゃく
EPA・DHA 中性脂肪・コレステロールを下げる
血管の老化を防ぐ
魚(マイワシ・サバ・ブリ・さんま・まだいなど)

これらの栄養素をたくさん摂ればいいというものではありません。不足しても良くないし、摂り過ぎても良くありません。
1日の適切な摂取量については「一日に必要な栄養素とは?計算方法と注意ポイント」を参考にして下さい。

逆に控えた方がいい物は?

アルコール

大量の飲酒は高血圧に加えて脳卒中やアルコール性心筋症、心房細動、夜間睡眠時無呼吸症候群などを引き起こすだけでなく癌の原因にもなり死亡率を高めると言われています。
しかしアルコールは少量であれば血圧を低下させる効果もあります。

エタノールで男性20~30ml(おおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合弱、ウイスキー・ブランデーダブル1杯、ワイン2杯弱に相当)/日以下、女性の場合はその約半分の10~20ml/日以下が適量と言われています。

食塩

食塩過剰摂取が血圧上昇に繋がります。食塩の1日の摂取量は6g未満がベスト。
加工品などは食塩が入っているので計算するときは注意!

高血圧の食事指導をしてくれる機関まとめ

高血圧は放っておくと脳卒中や心臓病など合併症を引き起こす恐ろしい病気です。
近医への受診や日本高血圧学会のホームページより高血圧専門医制度を受けることもできます。
現在、高血圧で治療をしてない方は医師の診断を受けましょう。

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