慢性腎臓病患者の罹患数は年々増え続け、現在では総患者数約29万6000人と憶測されています。
性別では男性18万5000人・女性11万人とういデータが出ています。
高齢化が進む日本では腎臓病患者の罹患数は増え続けると予測され、高齢になるほど患者数は多くなっています。
また慢性腎臓病が悪化したために透析導入となる方が年々増加し、患者数は32万人を超えています。
新たな国民病として注目されている腎臓病。
ここでは慢性腎不全の重症化や透析導入減少のために主に食事療法の重要性について説明します。
腎臓はなにをしているの?
腎臓はそらまめ状の左右120g程度の小さな臓器です。
画像元:広島大学大学院
腎臓の4つの働き
①尿の生産
血液は腎臓で濾過されその時に出た老廃物や塩分は尿として体外へ排出し、必要なものは再吸収して綺麗になった血液を心臓に戻します。
つまり腎臓は血液のフィルター的役割を担っています。
②ホルモンの生産・分泌
エリスロポリチン | レニン | プロスタグランディ |
---|---|---|
赤血球をつくる | 血圧を下げる↓ | 血圧を上げる↑ |
またビタミンDを活性化し、骨にカルシウムの再吸収を促進する働きもしています。
③血圧の調整
水分と塩分のバランスを調整し、血圧を一定に保つように働いています。
④体液バランスの均衡
身体の60%は水分でできています。その水分を均衡に保つように電解質の調整をしています。
腎臓病とは
腎臓病とは、腎臓の機能が低下し、本来の機能がうまくできない状態になることです。
腎臓病は急性腎不全と慢性腎不全に分類されます。
急性腎不全 | 慢性腎不全 |
---|---|
発症まで数時間から数週間 | 発症まで数か月~数年 |
急激に腎機能が悪化 | 自覚症状がないまま腎機能が悪化 |
回復が期待できる | 回復が期待できない |
治療は腎機能の回復 | 治療は進行を遅らせ合併症予防 |
年々増加している慢性腎不全は自覚症状がないままゆっくりと進行し、日本では1330人(成人の8人に1人)が罹患していると考えられ、新たな国民病として注目されています。
慢性腎臓病の定義
- 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の異常が明らか
※特にたんぱく尿の存在が重要 - GFR(糸球体濾過量)が60ml/分/1.73㎡未満
- 上記のいずれか、または両方が3か月異常持続する
慢性腎臓病の分類
画像元:宮城慢性腎臓病対策協議会
腎不全の治療
腎臓は一度機能を失うと元に戻ることはありません。そのため治療の目的は進行を予防し透析導入を遅らせること、合併症の予防になります。慢性腎臓病の治療は
- 薬剤療法
- 食事療法
の2つに大きく分かれます。ここで重要となってくるのが「食事療法」
食事療法のポイント
Point①たんぱく質制限
たんぱく質は摂取後、筋肉や血液となり身体のエネルギー源になります。その時出た老廃物(尿素窒素)は腎臓で濾過され排出されます。
そのため、腎臓の負担を最小限にするためにも「低たんぱく食」が必要になってきます。
慢性腎不全と診断されたら、ステージ3以降からたんぱく制限を行うよう指導されており、一日量が体重1kgあたり0.6~0.7gになるように推奨されています。
たんぱく摂取量の計算方法は
※例 体重60kgの人なら60×0.6=36 一日のたんぱく質摂取目安は36g
また、できるだけ質のいい良質たんぱく質を摂るように心がけることが大切です。
たんぱく質はどの食材に多く含まれているの?
たんぱく質を多く含む食品は(肉類・魚類・乳製品・卵・大豆)など、動物性食品です。
食品100gあたりの含有量
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あじ(生):20.7 | 鮭(生):21.7 | 豚バラ:14.2 | 牛もも:18.9 |
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鳥もも:20.5 | 卵:12.3 | 牛乳:3.3 | チーズ:22.7 |
Point②塩分制限
塩は身体の中になくてはならないものです。しかし、食塩を過剰摂取すると食塩に含まれるナトリウムが体内に水分を溜め込み体内の血液量を増やし、血圧が上がります。
その血圧を下げるためには腎臓に負担がかかります。そのため減塩により腎臓の負担を少なくしてあげることが大切になってきます。
また、食塩摂取量と予後の関係は明らかにされており、食塩摂取量の調節で末期腎不全に陥るリスクが低くなります。
食塩摂取目安はステージ問わず3g以上6g未満が推奨されていて、健康な人でも10g/日以下が理想です。
では食塩の量はどのように確認したらいいのか?食品には栄養成分の記載があり食塩換算値も表記してあるので、分かりやすくなりました。
栄養成分表示(一袋83gあたり) | |
---|---|
エネルギー462kcal たんぱく質4.0g 脂質29.1g |
炭水化物45.9g ナトリウム360mg (食塩相当量0.9g) |
食塩相当量とは、食品のナトリウム含有量から計算された値です。
食塩が多い食材には漬物類・魚介類・練り物(かまぼこ・ハム・ソーセージ)が挙げられます。
減塩の工夫はどうしたらいい?
・酸味や香辛料の利用しましょう。
レモン汁・すだち・とうがらしやカレー粉などを利用し、味付けを工夫してみて下さい。
減塩の強い味方になってくれます。
・風味の利用
ゆずやしそ、鰹節などは風味もよく味に変化もつけやすいです。
・調理方法の工夫
焼き物は表面もこんがり焼くことで香ばしさが出て、中身に味付けをしてなくても食べやすくなります。
・油を上手に利用する
揚げ物や炒めもので油の味を利用することで美味しく減塩ができます。また野菜などはドレッシングではなく、ごま油やオリーブ油の利用で減塩が図れます。
・目分量は危険
調味料の利用の際は目分量ではなく、計量スプーンを使用し塩分の過剰摂取を防ぎましょう。
調味料大さじ1杯分の食塩相当量
減塩味噌や減塩しょうゆなども売られているので上手に取り入れてみるといいですね。
・加工食品・練り製品には注意
かまぼこ・はんぺんなどの魚の練製品や、ウインナー、ハムなどの加工食品は塩分含有量が多いので食べ過ぎには注意しましょう。
・汁物・漬物の量に注意
汁物は具をたくさん食べるようにして、汁には塩分が多く含まれているので最後まで飲み干さず残すようにしましょう。
漬物は浅漬けなどで代用してみてください。
・素材を生かして
料理は調味料の味に頼らないで、素材の味を楽しむようにしてみて下さい。
Point③カリウムの制限
カリウムは筋肉や神経の伝達、老廃物の排出の助けたり、生命活動に欠かせない役割を果たしています。カリウムは食物から摂取し、必要な分は腸で吸収し不要な分の90%は尿から排出され、残りの10%は便から排出されます。
腎機能が低下していると、排出が上手くいかず血液中のカリウム値が高くなり「高カリウム血症」とうい症状を引き起こしてきます。高カリウム血症が続くと不整脈を起こし心停止になる場合も…
ですので腎臓病患者ではカリウム制限が必要になってきます。
一般的にステージG4-G5になるとカリウム制限の指示が出ます。
1日1500mg以下を目安に制限していきます。
カリウムはどの食材にも含まれますが、生野菜や生果物は他の食材に比べてカリウム含有量が多いです。一般的に野菜は健康に良く、沢山摂れば摂るほどいいと思っていませんか?要注意です!
食品別カリウム含有量(食品100g中)
果物類 | 野菜類 | いも類 |
---|---|---|
アボガド1700 バナナ360 キウィイ290 ぶどう130 いちご170 |
ほうれん草490 たけのこ470 にら400 水菜370 アスパラ260 |
さといも560 さつまいも540 ながいも430 じゃがいも340 |
魚介類 | 肉類 | |
するめ1100 いわし790 たい500 あじ490 車えび430 |
生ハム470 かも400 鳥ささみ420 豚ひれ肉410 牛もも310 |
カリウムはあらゆる食品に含まれていますが、腎臓病食でタンパク制限を行うと自然とカリウムの摂取量も減ります。また調理方法や処理時間でもカリウムを減らすことができます。
- 野菜や穀物類は細かく刻み茹でる できる方は2度茹でをする。
洗うことや茹でることで水に溶けだし、30~45%除去することができます。 - 果物は通常の半量または缶詰にし、シロップは飲まないようにしてください。
ドライフルーツは生果物よりカリウムを多く含んでいるので注意してください。 - 海藻類は他の食品に比べ、倍以上のカリウムを含んでいるので食べ過ぎないようにしてください。
Point④十分なカロリーを摂取
たんぱく質を制限すると自然とカロリー摂取量も低くなります。
カロリーは人間のエネルギー源です。カロリーが十分に摂れていないと体内のたんぱく質が分解されエネルギーに変わります。この現象を異化作用といい、体内の老廃物が増えます。
たんぱく制限をしていても、摂取したことと同じ状態になります。
たんぱく質を含まない油類や砂糖を上手に使い、エネルギーを補いましょう。

食事療法は自己流にならないよう医師や栄養士の指導の下、正しい食事療法で継続してください。
むくみ・血圧上昇・体重増加などの症状が出たらすぐに医療機関を受診しましょう。
腎臓病の食事指導をしてくれる機関まとめ
・全腎協(一般社団法人 全国腎臓病協議会)
腎臓病患者・透析患者・またその家族の方が、悩んでいることや不安に思っていることを専門家である医療ソーシャルワーカーや管理栄養士に無料で相談できます。
・宅配食事サービス
腎臓病食の作り方も分からないし、調味料を計算して料理をするのは難しい!と感じる方は、宅配食事サービスを利用するのもいいでしょう。
ウェルネスダイニングと彩ダイニングは管理栄養士が献立を考え、調理済みのお弁当を自宅まで届けてくれます。